「X-MEN」シリーズ/マイノリティ差別と「ほんとうの自分」

X-MEN

X-メンX-MEN/監督:ブライアン・シンガー/2000年/アメリカ


劇場公開時に一度見ています。
X-MEN:ファーストジェネレーション」を見たので、観直してみました。
「ファーストジェネレーション」をゲイ映画だと書きましたけれど、「X-メン」も「X-MEN2」もものすごいゲイ映画で、これねえ、あまりにもはっきりしすぎているので、わざわざ感想書く必要もないかと思いましたが、いちおう書いておきます。3本ぶんなので長いです。

X-MEN

あらすじ:突然変異であるミュータントは人間から迫害を受けている。マグニートー(イアン・マッケラン)は人間をミュータントに変えてしまおうとする。

冒頭の、強制収容所シーンは「ファーストジェネレーション」とまったく同じでしたね。カット割りも同じかな? なんかねーやっぱり「X-MEN」はマグニートーの物語なのかなあって思いますよね。


おすすめ
ポイント
ゲイに限らないマイノリティ差別の問題。
X-MEN

公聴会で、ケリー議員(ブルース・デイヴィソン)がミュータントについて糾弾するときに「ミュータントが何を隠しているか明かそう。ここにリストがある」と、国内で確認したミュータントについて読み上げます。

これって、普段は隠れている(隠れることが出来る)けれどリストに出来るくらいには表に出るマイノリティ、つまり人種や政治的思想、宗教に関するマイノリティのことだと思うんです。


サミット開催地であるエリス島が、かつて移民の島であったという説明がされるところも、人種的なマイノリティについて触れているように思えます。

また「子どもたちにミュータントの友達や教師を与えるべきか?」と問いかけます。これは、ゲイの教師を糾弾するのと同じなんですね。この場にミュータントの教師であるプロフェッサーX(パトリック・スチュワート)がいることも、意味があるように思います。

ふと思い立って「ゲイ 教師」で検索してみたら、「子供の担任の先生がゲイだとカミングアウトしたそうなんですが、法的にどうにかやめさせることはできないんですか?」というヤフー知恵袋が上位に上がってきて、なんか、もうね。言うに事欠いて「回答者は子どもの有無を書いてください、あと同性愛者は回答しないでください」ですってよ。もうねえ…。
マグニートーさんが聞いたら「ほらみろやっぱり人間は我々を迫害しようとしてるんだ、話し合いなんかしたって解り合えっこない」って言いますよ、きっと。

X-MEN

ケリー議員はマグニートーの手によってミュータントにされます。しかし、「ミュータント化は不自然なものなので、ケリーの身体がそれを拒み、細胞が崩壊する」と説明されます。

ゲイが、ヘテロをゲイにしようとするけどできない、というわけです。そりゃ出来るわけないんです、生まれ持ったものを変えられはしないんです。これは逆でも同じことで、ゲイをヘテロには出来ないんですね。ケリー議員が水になって死んじゃったみたいに、それこそ「死んでも変わらない」ものなんですよ。


X-MEN

プロフェッサーX側はみんな美男美女なのに、マグニートー側はみんな化け物なんです。セイバートゥース(タイラー・メイン)もトード(レイ・パーク)もミスティーク(レベッカ・ローミン=ステイモス)も、どう見ても人間じゃないでしょ。

これって、マイノリティ差別はいけないけども、醜いやつは悪人だって言ってるようなものなんじゃないか、って最初思ったんですが、あ、そうか、醜いというよりは見た目ですぐにわかってしまうマイノリティ、ようするに人種差別のことなのかなあって思いました。


X-MEN

見た目ですぐわかるマイノリティって言っても、それを醜く描くのはどうよ、っていうのは、「醜いから悪い」のではなくて「悪いことを表すための醜さ」なので、いいんです。

とはいえわたしはマグニートーが好きなこともあり、どうも彼の言い分は間違っていないように思えるんですよね。だから、言ってることが悪だとも思わないんです。

駅のシーンでサイクロップス(ジェームズ・マースデン)が少年に微笑み返すシーンは、当初予定されていませんでした。少年が「X-MEN」コミックのファンで、特にお気に入りのキャラがサイクロップスだったため、少年がジェームズ・マースデンに向かってにこにこしっぱなしでどうにもならなかったので、ジェームズ・マースデンが振り返って微笑んだんですね。それを監督が気に入り、シーンとして採用になったそうです。少年、よかったね〜。



X-MEN2(X2)

X-MEN2X2/監督:ブライアン・シンガー/2003年/アメリカ


あらすじ:プロフェッサーXが囚われの身になったため、マグニートーががんばってなんとかする。

プロフェッサーXが操られてふわふわしちゃってるので、マグニートーはウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)たちと手を組みます。キャンプまでしてがんばってるよ。マグニートーはなんだかんだいってもミュータント仲間を守りたいんですよね。内輪もめしてる場合じゃないですよ、全員殺されたらなんにもならないですよ。

マグニートーはジョン・アラダイス(パイロ)(アーロン・スタンフォード)に「ほんとうの名前」を尋ねるシーンがあります。やっぱりねマグニートーさんはミュータントのことを理解しているんですよ。

おすすめ
ポイント
ゲイの描かれ方が、よりわかりやすく身近なものとなっています。
父親と息子についての物語です。

X-MEN2(X2)

博物館でジーン(ファムケ・ヤンセン)がちょっと調子悪くなり、周りの人達が自分を見たり悪態をついているように感じています。異質なものとして白い目を向けられる、あのひと普通じゃない、とこそこそされる恐怖を描いています。
「X-メン」での駅のシーンもこれに近いですね。「見ちゃいけません」ってところね。

これらはマイノリティに対する偏見を描いています。非常に身近なものとして描かれるので、すごくわかりやすいですね。


X-MEN2(X2)

ボビー・ドレイク(アイスマン)(ショーン・アシュモア)が、両親に、自分がミュータントであることを告白するシーンがあります。

このシーンはあきらかにゲイが家族にカミングアウトすることを表しています。イアン・マッケランはこのシーンに関して脚本上のアドバイスをしたそうです。


アイスマンの両親は、彼に向かって「いつから気づいたの?」と言います。また、「普通の人間になれないの?」と聞きます。なれないよ。ミュータント、=ゲイが生まれ持っての性質であることをまったく理解していないんですね。

弟のロニーは耐えられず通報します。どう見ても思春期なので、家族にゲイがいることをまったく受け入れられない、まあ親ですらまったく受け入れていないのでしかたのないことです。この一連のシーンの最後、実家を後にするアイスマンと、それを家の中から見ている家族の様子が大変切ないですね。

X-MEN2(X2)

ウィリアム・ストライカー(ブライアン・コックス)の息子、ジェイソン(マイケル・リード・マッケイ)は、ミュータントです。

プロフェッサーXは、ストライカーに向かって「突然変異は病気じゃない」と言います。ストライカーは、「突然変異は親のせいだ」と言います。アイスマンのカミングアウトシーンでも、「ミュータントのDNAは父親から遺伝する」と言っています。


この映画には、2人の「ゲイの息子を持った父親」が出てくるんです。アイスマンのお父さんと、ジェイソンのお父さんでは、ジェイソンのお父さんのほうがヒドイんですけれども、現実的にいそうなのはアイスマンのお父さんですよね。

ゲイが遺伝するものなのかどうかは、わたしの不勉強ゆえに明確なことを言えないのですが、ゲイの遺伝子があるという説もあるにはあります。遺伝についてはゲイに限ったことではなく、混血児のことを指しているのかもしれませんし、そう考えたほうが自然なのかもしれません。

ストライカーは、ミュータントをコントロール下に置いておける限りは自分のそばに置いてやってもいい、と言います。マイノリティを弱い者として支配できるなら存在を許してやってもいいと言っているのと同じことで、ようするに奴隷なのでちょうヒドイです。

また、彼は息子のジェイソンに手術を施し、完全に人格を奪っています。それを、「息子は死んだ」と表現します。人格の喪失は死に近いのかもしれませんが、本人の性質自体は残っているし、肉体も生きているのに、「死んだ」と言うんです。彼にとっては、マイノリティである限り息子を生きた人間扱いはできないということなのかもしれず、ちょうヒドイです。ていうか死んだんじゃなくて殺したんでしょ。

XMEN2ジェイソンさんです。脳味噌いじられました。

この人がプロフェッサーXに見せる幻覚の中で、自分の姿を少女にしているんですよね。ジェイソンさん、セルフイメージがおんなのこなんだね。身体はおっさんでも、ほんとうの彼は少女なんだよ。
X-MEN2(X2)

わたしのお気に入りはカート・ワグナー(ナイトクローラー)(アラン・カミング)。

かっこいいし、なにかと名乗りをあげたがってうずうずしててかわいいし、ストーム(ハル・ベリー)のこと好きっぽくてかわいい。誰に会っても最初は引かれるところがかわいそうでかわいい。どうみても悪魔なのに敬虔なクリスチャンで、その信心深さがいちいちウザくてかわいい。そんなに罪の意識を感じなくていいんだよ。



X-MEN: ファイナル ディシジョン(X-Men: The Last Stand)

X-MEN: ファイナル ディシジョンX-Men: The Last Stand/監督:ブレット・ラトナー/2006年/アメリカ


あらすじ:ミュータント治療薬が発明されたのでマグニートーが怒る。

監督がブレット・ラトナーへ変更になり、ブライアン・シンガーが製作に一切関わっていないせいなのか、ゲイ的な要素はほぼありません。

おすすめ
ポイント
脇役キャラクターはいいと思うんです。ビーストかわいいです。
前半1時間だけでいいです。安易な展開が残念でした。

X-MEN: ファイナル ディシジョン(X-Men: The Last Stand)

前半はねえ、いいんですよ。
ウォーレン・ワージントン三世(エンジェル)(ベン・フォスター)が泣きながら「おとうさんごめんなさい〜」って羽根を削ってさ。

ウォーレンのお父さん(マイケル・マーフィー)がミュータント治療薬『キュア』を発明し、息子に打とうとします。が、ウォーレンはギリギリで拒んで逃げちゃう。


X-MEN: ファイナル ディシジョン(X-Men: The Last Stand)

僕が人間になるのは僕たちふたりの願いじゃない、父さんひとりの願いだ

これは親子のすれ違い、父への反発を描いていて、差別とか偏見とかが基にあるものではないんですね。お父さんは息子がつらい思いをしていたのを知っている、話し合いもしてきた。でも解り合ってはいなかった。ウォーレンはお父さんのことを憎んでいないんですよ。


この物語は「選択」についてがテーマだと思います。ウォーレンがミュータントでいつづけることを選択するところから物語が動き始めるんです。
だから邦題が「Decision」なんですよね、選択し、決断する。「X-MEN」シリーズは原題より邦題のほうがいいですね。

X-MEN: ファイナル ディシジョン(X-Men: The Last Stand)

ヘンリー“ハンク”・マッコイ(ビースト)(ケルシー・グラマー)。政治家です。

ビーストについては、「ファーストジェネレーション」を見てからこの映画を見ると、ほんとせつない。あの頃自分は人間になりたかった、でもなれなかった。人間とミュータントが共存できる社会にするために政治家になり、軌道に乗ってきたところで治療薬の出現というのは、複雑な思いでしょう。


X-MEN: ファイナル ディシジョン(X-Men: The Last Stand)

治療薬があれば、あの頃願っていた「人間」になれる、けれども今の自分が今の立場でミュータントをやめてしまったら、あの頃よりもずっと多くいるミュータントたちが生きづらくなるかもしれない。

だから彼は、ミュータントが治療薬を投与することに関しては本人の選択に任せたいという希望を持っているんですね。彼にとって残念なのは、人間の政治家たちは彼ほど思慮深くはなかったということです。


X-MEN: ファイナル ディシジョン(X-Men: The Last Stand)

テーマはいいんですよ。ミスティークのやんちゃっぷりもいいんです、ジャガーノート(ヴィニー・ジョーンズ)がドスドスまっすぐしか走れないとこもかわいくてバカでいいんです。アイスマンとパイロの戦いも、1から引っ張ってきてとうとう直接対決といったかんじで良いんです。

いいんですけどー、中盤のー、展開はー、ダメだ。あれはだめだ。あれはやってはいけない。本当に許しがたい。いくらスタッフロール後にあの描写があるとしても、完全に後付けだもん。


X-MEN: ファイナル ディシジョン(X-Men: The Last Stand)

物語の盛り上がりのためにあの人を殺すのは、ほんと良くないですよ。しかも、あるキャラクター、まあフェニックス(ファムケ・ヤンセン)ですけども、フェニックスのパワーがちょうすごいぜとんでもないんだぜ、っていうのを表すためだけに殺してしまう。そんな死に方あるか? と思うんです。

とにかく主要キャラの退場が多くてですね、退場には死亡だけでなく人間化も含みますけれど、ぜんぶで6人かな。それでハッピーエンドのふりしたってだめですよ。


X-MEN: ファイナル ディシジョン(X-Men: The Last Stand)

とんでもないパワーを持ったフェニックスを、さあどうやっておとなしくさせましょうか、っていうときに、退場という手段をとるのもですね、なんだあ、それ。

あのね、キャラクターが死んでショック、っていうのは、人の心を動かす方法としては安易なんです。だって死んだら悲しいのあたりまえだからね。

それにくわえて、ミュータントパワーの喪失。これは、喪失を選択した人はまだいいんですけども。やはり主要キャラの1人をね、「倒す」ために喪失させるんです。


X-MEN: ファイナル ディシジョン(X-Men: The Last Stand)

ミュータントが持っている危険なパワーを奪いましょう、奪う側もミュータントです、っていうのはね、前2作であれだけ描いてきたマイノリティ差別の問題はスッポ抜けちゃってて、なんでもない、ただ悪を悪としてしか描いていないんです。

あ、「奪う側もミュータント」っていうのは、リーチ(キャメロン・ブライト)のミュータントパワーのことではなく、治療薬をある人に投与するミュータントのことです。


派手だし、見ているときは楽しいんですけれど、後に何も残らない。なんにも残らない映画はわたし、好きですが、今まで築いてきたものをブチ壊しにするような「残らなさ」は、いただけないです。残念でした。
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by G-Tools , 2011/08/10

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  • 2014/06/01 9:57 PM
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