スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム/トニー・スタークが遺したもの

スパイダーマン:ファー・フロム・ホームSpider-Man: Far From Home/監督:ジョン・ワッツ/2019年/アメリカ


これからの世界は、「エンドゲーム前」と「エンドゲーム後」に分けられるのか?


新宿ピカデリー スクリーン1 S-26で鑑賞。満席だったと思います。いつも座っている席(一番うしろの、通路の前)の隣が偶然空いていたので慌てて取りました。

あらすじ:夏休み、ヨーロッパ旅行です。

ネタバレしています。
本文中、ネタバレの前には注意書きをしています。未鑑賞の方はお読みにならない方がいいと思います。

おすすめ
ポイント
アベンジャーズ エンドゲーム』(2019年)の直後にこんな高いクオリティのものを観せてもらっていいの?
サム・ライミ監督の『スパイダーマン』(2002年)、『スパイダーマン2』(2004年)、いまいち評判のよくない『スパイダーマン3』(2007年)、マーク・ウェブ監督の『アメイジング・スパイダーマン』(2012年)、『アメイジング・スパイダーマン2』(2014年)、そしてジョン・ワッツ監督の『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年)と、アニメーションの『スパイダーマン:スパイダーバース』、どれも私は好きで、もちろん『キャプテン・アメリカ』シリーズや『アベンジャーズ』シリーズに出てきたスパイダーマンも好きである。トビー・マグワイアアンドリュー・ガーフィールドトム・ホランドとキャストが変わってきたが、それぞれに魅力がある。

思うに、アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)の登場までは(あるいは登場後も?)、日本で一番人気のあるマーベルコミックキャラクターはスパイダーマンだったのではなかろうかと思う。これは事実と異なるかもしれないが、顔の出ていないスーパーヒーロー(スパイダーマン、アイアンマン、デッドプールとか)の方が、顔の出ているヒーロー(スーパーマン、ハルク、ソーとか)よりも「一般的に」人気があるように思う。もちろん顔が出ていても出ていなくてもかっこいいものはかっこいいし、顔が出ているからよくないと言っているわけではない。肌感覚で、そう見えるなあというだけのこと。

※以下ネタバレを含みます。
主に脇役についてのネタバレに多くを割いています。

さて、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』である。夏休み、クラスメイトたちとともにヨーロッパへと旅立つトム・ホランドは、憧れのあの子・MJ(ゼンデイヤ)に告白したくてたまらない。スパイダーマンは、今まであれだけの厳しい戦いを経てきてもなお、まだまだ精神的には未熟と言わざるを得ない「子供」だった。彼は自分のことをこう思っている。世界を救うような人間じゃない、”親愛なる隣人”だと。「自分にはまだ早いから」という理由だけでなく、まだまだもうちょっとしばらくは遊ばせて欲しい、ご近所ヒーロー程度でいたい、要するに重大な責任を背負いたくはないという気持ちでいるのだろう。果たしてそのような考え方をしていることについて、彼を責めることの出来る人間がいるだろうか? まだたったの16歳なんだ。メイおばさん(マリサ・トメイ)のもとで「守って」もらわなければならないような、子供なんだ。

ところが、世界は彼が子供であることを許さない。イタリアで、謎の怪物と戦う謎のヒーロー、ミステリオ(ジェイク・ジレンホール)を見たピーター・パーカーは、目立たぬようにミステリオの戦いを手伝う。ここのシーンは記憶している限り今までなかったと思われる、「顔だけマスクで隠して私服で戦うスパイダーマン」が見られる。すでにそういうシーンがあったならごめんなさいだが、ともかく。私はこの様子を見て、ああ、そうか、中身は普通の、生身の人間なんだよなあ、と当たり前のことを思ったりした。

この映画は、脇役がとても良い。メイおばさんとハッピー(ジョン・ファブロー)、ネッド(ジェイコブ・バタロン)とベティ(アンガーリー・ライス)の関係については、ピーター・パーカーの活躍や苦悩を邪魔しない程度に、しかし雑でなく描かれる。特にネッドとベティの恋物語は印象的だった。彼らは行きの飛行機の中で意気投合し、あっという間に彼氏彼女の関係になる。旅行中、彼らはイチャイチャして過ごす。とても気の合う相手だ、解り合えるんだ、とネッドは言う。しかし旅行が終わった時には、彼らの関係は破綻してしまっている。この描き方が大変良かった。彼らは仲違いしたわけではない。ネッドは言う、「別れたけれど、一緒にいた時のことは良い経験だった」と。厳密にこのセリフではなかったが、意味としてはそれほど遠くないはず。考えてみて、16歳やそこらで、こんなセリフはなかなか言えない。人間として充分に成熟した者の言うセリフだ。ネッド(とベティ)は、短い旅行期間中に、確実に成長している。だってネッド、最初は「ヨーロッパでモテようぜ!」なんて軽いことを言っていたんだもの。(おそらくは)初めての恋で、相手を尊重しお互いに高め合うことが出来たと言えるなんて、素晴らしい恋愛じゃないか。まったくもって羨ましい。

一方、メイおばさんにめろめろであることを隠しもしないハッピーのキュートさと、まんざらでもなさそうだったメイおばさんとの落としどころは、もっと大人的だ。ピーター・パーカーから「付き合ってんの?」と聞かれた二人は、同時に「いいえ」「そうだ」と全く別のことを言う。メイおばさんは「付き合ってない、ない、これは一夏の情事ってことで」みたいな感じで軽〜く捉えている。彼らも別に仲違いしたわけではないだろう。二人の気持ちが通じ合っていなかっただけだ。大人の恋愛が、ちょっと面倒くさくて、ちょっと複雑で、ちょっと無責任なときもあることを描いているのかもしれないと思う。

ピーター・パーカーとMJの恋愛模様は王道であると言える。いわゆるヒーローとヒロイン。MJはすぐにダークなことを言ってしまう、ちょっぴり変わった性格の女の子だが、ピーターはそんな彼女に想いを寄せる。ステレオタイプでないヒロインの造形。彼らの恋愛はハッピーエンドで、そうね、そうなるわよね、と思いつつも、こちらを納得させる力がある。王道はいいものだ、安心できるから。

スーパーヒーローにはヒロインがつきものである。さきに挙げた7本の『スパイダーマン』シリーズにおいて、恋愛がどのように描かれてきたのかをまとめたら面白いかも、と思った。「恋愛で観る『スパイダーマン』」、どうかな。ちょっと、時間が出来たら、書いてみたいなと思った。

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