トッド・ソロンズ作品は『ダークホース リア獣エイブの恋』以外、日本で見られるものに関しては全部見ている。で、一番に思ったのが、今までのようなエッジの効いた悪意は感じられなかったな、というところ。ただそれは決して勢いを失ったということではなく、より「普通の人」に近い感覚の悪意が滲み出ているように見える。そう思えば、一貫してトッド・ソロンズは「普通の人」を描いてきた。普通の、私達の中にある感覚、妬み、嫌味、鬱屈などを。今作は、軽やかで柔らかい色づかいの底に、どんよりと澱のように溜まった不快感がある。そしてそれは、しつこさを感じるほどに繰り返される。これこそがトッド・ソロンズの持ち味で、不快であるのはもちろん悪いことではない。
4編からなるこの作品は、生と死、愛、差別、成功と挫折、人生を偽ること、などが描かれている。子犬(邦題では子犬となっているが成犬である)は登場人物たちの間を転々とし、……いや、実のところ1匹の犬が、ある登場人物から他の登場人物の手へと明確に「手渡される」のは最初の2編だけなのだが、ともかく、転々とし、人々に寄り添う。犬からの視線は最初の最初だけで、特にダニー・デヴィートの話では、犬は居ても居なくても大差ない。もちろん、ダニー・デヴィートが唯一心を開ける存在としてそこにいることは見て取れる。これは映画についての話であり、特に映画を作っている人にとっては耳の痛い瞬間もあったのではないだろうか。そして、物を教えている人にとっても。
88分の映画にインターミッションを入れるという遊び心もありつつ、人々に対する鋭い観察眼を持っている監督であることが伺える。おそらく、その「眼」は監督みずからに対しても向けられているのであろう。ぜひ、今後もこのような作品を撮り続けて欲しいと切に願う。
4編からなるこの作品は、生と死、愛、差別、成功と挫折、人生を偽ること、などが描かれている。子犬(邦題では子犬となっているが成犬である)は登場人物たちの間を転々とし、……いや、実のところ1匹の犬が、ある登場人物から他の登場人物の手へと明確に「手渡される」のは最初の2編だけなのだが、ともかく、転々とし、人々に寄り添う。犬からの視線は最初の最初だけで、特にダニー・デヴィートの話では、犬は居ても居なくても大差ない。もちろん、ダニー・デヴィートが唯一心を開ける存在としてそこにいることは見て取れる。これは映画についての話であり、特に映画を作っている人にとっては耳の痛い瞬間もあったのではないだろうか。そして、物を教えている人にとっても。
88分の映画にインターミッションを入れるという遊び心もありつつ、人々に対する鋭い観察眼を持っている監督であることが伺える。おそらく、その「眼」は監督みずからに対しても向けられているのであろう。ぜひ、今後もこのような作品を撮り続けて欲しいと切に願う。
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