悪童日記/ふたりだけの間に成立する「正義」について

悪童日記

悪童日記A nagy füzet/LE GRAND CAHIER/THE NOTEBOOK/監督:悪童日記/2013年/ドイツ・ハンガリー


ただ、この世を生き延びるために


TOHOシネマズシャンテ E-9で鑑賞。原作未読、事前情報としては『双子が出てくる』だけでした。
これはねー面白かったですね。

悪童日記

あらすじ:双子が日記をつけます。

双子の少年(アンドラーシュ・ジェーマントラースロー・ジェーマント)が第二次大戦中、疎開のために母親方の祖母の家に預けられますが、殴られます。

ネタバレしています。


おすすめ
ポイント
美少年とナチスとおっぱいとアニメーションが好きな人におすすめです。話は暗いよ。ああいう、コラージュしてあるノート欲しい! 作るか!
悪童日記

彼らの行いを戦争のせいにするのはとても簡単だし、あれくらいの年代の時に両親から充分な愛情を受けられなかった、親の都合で捨てられた(ようなもの)だからとか、子供の持つ残酷さゆえと言うのも、とても簡単だと思うのです。

もちろん、それらの要素は多大なる影響を与えてはいるのですが、きっかけに過ぎないな、とも思うんですね。


悪童日記

彼らの間には彼らなりのルールと正義があり、それにのっとって行動している。親からの言いつけである『勉強する』『日記に真実を書く』のふたつを守ることから始まったそれは、生きる指標となっていく。

ものを書き留めるのは、わたしたちの実生活においても重要だと思っていて、記憶は薄れるけれども書いたものは残り、人生の記録として確実に刻まれてしまう。
良きにつけ悪しきにつけ。


悪童日記

彼らは、自分たちが作り出し書き留めたルールに縛られている。意志の強さが、それを加速させる。

そう思うのは、母親を拒むとき『別れる前の母親からの言いつけを守りつつ、その母親を拒否している』から。
もちろん、母親が知らない人と一緒にいるせいもある。でもそれ以前にふたりで決めた『愛を忘れる』というルールを優先すること、また、母親との再会までに経験したいろいろな事柄が、彼らを確実に変えてしまった。

それが彼らにとっての『成長』であって、ふたりは幼いながらも生き急いでいるように見える。


悪童日記

面白いのは、出てくる大人がどいつもこいつもクズばかり(脱走兵はご愁傷様としか言いようがないが)のわりに、双子が子供だからとか、他人からの影響、世間体、政治的理由などで、双子に対して情けをかけてしまったり、言いなりになってしまうところ。

あの憎たらしいお婆さんですら、時には涙を流し、最終的には双子を守ろうとまでする。

彼らが他人と接するとき、『友達』か『友達ではない』かの基準を設けている。その基準も、物語が進むにつれ変化する。兎口の少女のときは、同情心があった。靴屋のときは、タダで靴をくれ情けをかけられた、感謝もあっただろうが金銭的に得をした。


悪童日記

友達』になれそうだった金髪の女は、観客としてはおっぱい見せてくれてありがとうだけれども、その後露呈する彼女の醜さにより双子には敵となる。

双子にとっては大人たちの事情なんて関係ない、『人を殺すなと言うけれど、戦争してるよね』と言うのは確実に大人を黙らせる言葉で、彼らはおそらくそれをわざと言っている。大人たちを支配下に置くために。

一方で、『死にたいの?』じゃあ殺してあげる、という、妙な『素直さ』も持ち合わせている。


その、ある種の歪さは(繰り返しになるけれども)彼らが彼らの間でのみ成立させている正義とルールに基づいて行動しているから。彼らは父親を自分たちの踏み台(まさに文字通りの踏み台)とする。彼らにとって、父親はすでに『その他の大人たち』と同じものとなり、母親のとき以上に無慈悲な行動に出る。もはや、人とすら認識していない。

別れのシーンで、彼らはノートを押し付け合う。ふたりを繋ぎ止めていたものを、ふたりともが不要とする。
ノートを受け取りあの場に残った彼が、それをどうするのかまでは描かれない。彼らはその悲惨で残酷な子供時代を終えたのだ。

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