ファーナス/訣別の朝/この国はもう、頼りにならない

ファーナス/訣別の朝

ファーナス/訣別の朝OUT OF THE FURNACE/監督:スコット・クーパー/2013年/アメリカ


アメリカン・ドリームなんてない。それでも、アメリカで生きていくしかない


8月前半に試写で鑑賞。公開は9月27日です。

ファーナス/訣別の朝

試写状が届いた時にはこの映画の存在を知らず、クリスチャン・ベイルケイシー・アフレックウディ・ハレルソンフォレスト・ウィテカーウィレム・デフォーサム・シェパードってなんだこの豪華キャストは! しかも製作にレオナルド・ディカプリオリドリー・スコットとな? と思いまして、どうにか時間作って見に行きました。

あらすじ:すべてを無くした男が立ち上がります。

ラッセル(クリスチャン・ベイル)は、製鉄所で働きつつ真面目に暮らしてたんだけど、弟ロドニー(ケイシー・アフレック)がヤバいことに手を染めてるっぽくて、どーしたもんかなーってなります。

ネタバレしています。ネタバレ前には注意書きをしています。


おすすめ
ポイント
アカデミー賞級の役者がばんばん出てくるので、安心感、そして演技力対決。話は暗い。社会派だけどアメリカの事情わからないから、わたしはそこんとこは差っ引きました。
冒頭、ウディ・ハレルソンが「ミッドナイト・ミート・トレイン」を見ています。オバマが大統領になるかも〜というニュースが流れたりするし、2008年のお話なんですね。街は荒廃した感じがものすごくする、どんよりした天気や工場の見た目とかも相まって、時代に置いてきぼりにされたというかんじ。そして、土地自体は広いのに、人間関係は狭い。

ファーナス/訣別の朝

この映画、前半はケイシー・アフレックの物語がメインかなって思ったんですね。

イラクに4回行った、酷い目にもあった、国のために戦ったのに、国はなんにもしちゃくれない。ケイシー・アフレックの背中には銃と米軍ヘルメットの刺青が入ってるんだけど、たぶんそれを入れた時には、俺は国のために戦っているんだという誇りがあったんだと思うの。
でも裏切られた。今の自分はなんなんだ、何者なんだ。

俺は兄貴や親父みたいな仕事をやる気はない。それは結局、自分を捨て駒として使った国のために働くのと同じことだ。


ケイシー・アフレックはウィレム・デフォーに『あんたみたいになりたい』と言う。ケイシー・アフレックにとってデフォーは、法を破って金儲けをしている、国に逆らっているアウトローで、かっこよく見えたんだろう。だから自分も、国のためではなく、自分のために戦いたい、もちろん金儲けだってしたい。
たとえそれが、痛みを伴うものであっても構わない。自分を試してやろうという気持ちもあったでしょう。

ファーナス/訣別の朝

前半に起きたある事件によって、クリスチャン・ベールは何もかもを無くすわけです。

あれさえなければ、自分は今までどおりに溶鉱炉で働いて弟の心配もしつつ、貧しいかもしれないが彼女と暮らし、ある程度は平穏な人生を続けていけただろう。
そこに対して彼は、残念であるとか、後悔しているとか、悔しいとか、そういう感情は見せないんですね。

彼女に対して見せた態度ですら、自分を抑えている。
ここのシーンのクリスチャン・ベールはすごいですね。彼がいかに自分を抑える人間かというのがわかるんですよね。


ファーナス/訣別の朝

後半にある食事シーンもそうです。あの状況は普通であったら耐え難いであろう。わたしだったらイヤですね、まず、食事じたいしないですね。

後半は一転し、クリスチャン・ベールが今まで抑えていた感情を露わにしてゆくんです。

自分に残されたものは、法の届かない場所にあると言われてしまう。やはり国が、彼らを守らない、守れないと言ってくる。じゃあ、自分でやるしかない。

守りたいものは失われてしまったが、それを奪ったものを自分の手で裁いてやらなければ、あの人の人生も、自分の人生も、曖昧なままで終わっていってしまう。

※以下ネタバレを含みます。
具体的に書いてはいませんが、ラストシーンについて触れているのでご注意下さい。


ファーナス/訣別の朝

クリスチャン・ベールがウディ・ハレルソンを追い詰め、対峙したとき、彼らの間に和解が成立しそうになる瞬間があるんですね。

それはウディ・ハレルソンがケイシー・アフレックのことを『あいつはタフな奴だった』と言うところです。ウディ・ハレルソンはある程度、ケイシー・アフレックを認めていた。それがクリスチャン・ベールに伝わったんですね。


ファーナス/訣別の朝

ここで、フォレスト・ウィテカーはクリスチャン・ベールを撃ちません。それは、彼が『国に仕える者』であるからです。

フォレスト・ウィテカーがクリスチャン・ベールに対して感情移入や同情、あるいは彼を守ろうとしているのであれば、クリスチャン・ベールを撃つ方が自然だと思います。実際フォレスト・ウィテカーは、クリスチャン・ベールに対してそのような感情を持ってはいます。
しかし、物語上、彼は行動できないんです。

クリスチャン・ベールとウディ・ハレルソン、そしてケイシー・アフレックの間に、国は介在できません。


フォレスト・ウィテカーが、クリスチャン・ベール、もしくはウディ・ハレルソンを撃ったとしたら、ケイシー・アフレックの苦悩はなんだったんだ、ということになってしまう。そして決着がついたとき、クリスチャン・ベールは少しだけ安堵にも似た表情を見せます。この後待ち受けているものがなんであるかを、彼は知っている。けれども、ここですべてが終わった、あらゆる意味でね、終わったな、という、国が出来なかったことを自分はやった、あとは、国に自分を委ねるしかない。あいつが憎んだ、このクソったれな国に。

photo
ファーナス/訣別の朝 [Blu-ray]
ポニーキャニオン 2015-02-03

by G-Tools , 2014/12/16

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