キャプテン・フィリップスCaptain Phillips/監督:ポール・グリーングラス/2013年/アメリカ
俺たちはもう、ここまで来たら引き返せない
丸の内ピカデリースクリーン1、2階U列18で鑑賞。丸ピカは大きいスクリーンなら2階がおすすめよ!
トム・ハンクスが出ていたので見ましたね、あと評判良かったから(流されやすさよ…)。
予告はなんとなくテレビで流れているのを見ていましたし、事件のことも当時報道されていたので、概要は知っていました。それをどう見せてくれるのかなーって思ってたのですが、これはねー良かったです!
あらすじ:貨物船が海賊に襲われます。
トム・ハンクス船長ひきいる貨物船が、ソマリア沖を通過して荷物運ばなきゃいけなかったんだけど、ソマリア人の海賊4人に襲われて、あっというまに船を乗っ取られちゃってどうしようっていうお話です。
※ネタバレはありません。ないと思います。いや、あるかな…もうわかんないな。実話なので、最終的にどうなるかは知ってる人も多いと思います。
- おすすめ
ポイント - 130分以上ありますが緊張感が続きダレるところが一切なくて、長さを感じませんでしたね。
海賊側に感情移入してしまいます。トム・ハンクスは安定の見事な演技でした。
残念なことに『見捨てられる命』はあって、命はみな平等に重いのだというのはどうがんばっても綺麗事にしかならないわけです。
さてソマリア人海賊です。船長はムセ(バーカッド・アブディ)。仲間同士4人でオーディション受けたら4人とも受かった素人さんだそうで、えええ、ほんとですか、っていうほど演技がすごい。トム・ハンクスと互角に渡り合っていました。緊張感がはんぱないですね。
彼らの風貌はトム・ハンクスら貨物船の乗組員と正反対で、年齢も親子ほど違うし、肉付きもね、ぜんぜん違う。貨物船乗組員は太り気味の人をわざと選んだのかと思いましたよ。
ソマリア人海賊の母船は来ない、助けは来ないのです。捨てられた。それがソマリア人にとっては当然のことなのでしょう。失敗した者に割く資源も人員もいない。
でも、アメリカ人には助けが来る。圧倒的な戦力を持ってね。かなうわけないですよ。
それでもムセは、このままなんとかアメリカに立ち向かえばカネを手にしてソマリアに帰れると思っている。諦めもあったかもしれないが「いまさら手を引くことは出来ない」、だから、立ち向かうよりほかの選択肢はなかったんですね。進むも地獄、戻るも地獄。そして、まだ子供なのだよ。発想自体が子供なんだ。だから何度も「大丈夫だ、黙れ」って言うんだよね。
世の中には、想像もつかないような過酷な人生を送らねばならない子供もいる。この映画は、トム・ハンクスが身を挺して乗務員を救ったというある種の美談が最も大切なことではなく、ソマリアでは子供があのような生き方をせねばならないこと、そしてその過酷さを過剰には押し出さず描いたというのが、大切なのではないでしょうか。
わたしはね、最後のトム・ハンクスの表情に、安堵とともに、目の当たりにしてしまった現実の悲惨さに対する嘆きを感じましたね。
アメリカ映画で、アメリカ軍が介入した実際の事件について、ソマリア人の事情に触れ、彼らの言い分を描いたのはりっぱだと思いますね。ただやはり悲しいことに、それで現実の状況が変わるなどということも、ないのですけれど…。
バーカッド・アブディは28歳ですが、実際の事件でのムセは当時15歳だったとか18歳だったとかあんまはっきりしてない。裁判で刑を重くするために18歳ってことにしたのかもしれない。としたらそれって酷くないか…とも思うわけです。やりきれないな。現実はむごいものです。