マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙/妥協するな、と彼女は言った

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙/The Iron Lady

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙The Iron Lady/監督:フィリダ・ロイド/2011年/イギリス


独りでなんて、生きていけないのに。


試写で見たのですが、後半ちょっとうとうとしてしまったので劇場にも見に行きました。2回目見たときはもう泣いてしまってたいへんでしたね。映画の出来としては完璧ではないというか、悪いところも散見されるのですが、それとこれとは別ですからね…。

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙/The Iron Lady

あらすじ:英国初の女首相マーガレット・サッチャーが人生を振り返ります。

元首相マーガレット・サッチャー(メリル・ストリープ)が、亡くなった夫デニス(ジム・ブロードベント)の幻覚に悩まされつつ夫の遺品整理を決意するまでのお話です。

ネタバレはありません。


おすすめ
ポイント
予告から受ける印象と違う映画です。最近こういうの多いな。「鉄の女の涙」って邦題ダメだと思う。メリル・ストリープはさすがとしか言いようがありません。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙/The Iron Lady

この映画ねものすごく「J・エドガー」に似ているんですよ。構成もそうなんだけれど、主人公の混乱っぷりや、夫婦愛もね。冒頭の食事シーンがすごくよくて、胸がしめつけられるような血の気が引くような気持ちがしましたね。

とくに前半のサッチャーの描写において、客観的な真実はないと思うのです。彼女の回想として描かれていますから、陰口を叩かれていたのがほんとうのことなのか、プロポーズの言葉は正確にあのとおりだったのか、ほんとはわからない。彼女がかつて見た風景は、老女となった彼女が思い出す風景と、一致しているわけではない。

人は過去の思い出をねじまげて記憶するもので、思い出は美化されるとも言いますが、逆の場合もあるわけです。長い間強烈に覚えているような出来事は、前後の思い出などともあわせて、より強く感情的なものへと変化させてしまうんだと思うんですよね。


マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙/The Iron Lady

しかも彼女は認知症を患っていますので、今は人生を『習慣付けられた行動』だけで送っているのです。ただの雑談ですら、『首相としての意見』を述べてしまう、今まで何度も話してきたであろうことを繰り返している。自分はまだ首相だと思っているから、テレビで現在の自分自身が映ると、とたんに混乱してしまうのだと思うんです。

まあ認知症のわりに時系列をきちんと覚えているなあという不自然さみたいなのもあります。だからねー、すごく良く出来たいい映画っていうわけじゃあ、ないんですよーそれはね。でもね。


マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙/The Iron Lady

首相になってから引退までの出来事にかんしては、実際の映像もかなり差し込まれるため、客観性が出てきます。そしてわたしが試写で寝たのもこのあたりでした。

この映画は前半のほうがよい。わたしは、主人公が混乱していて何が真実なのかわからないお話、っていうのが好きなので、余計にそう思うのだと思います。だからね、わたしのこの映画にたいするプラスの評価は、ぜんぶ前半部分に向けられるものと思って欲しいですね。たんに、『わたしが見たかった部分』について褒めていると受け取ってくださってかまいません。あ、ラストはすごくいいです。わたしが泣いてしょうがなかったのは、プロポーズのところと、最後ですね。


サッチャー本人にとって強烈に心に残っていた部分だけをかいつまんで回想されていたのだと思えば、事件などのつながりや意味がイマイチわかんなくっても問題ないんですよね。伝記映画としては105分はやや短く、食い足りなさも感じますけれども、具合の悪い人がいろいろ思い出して調子悪くしている映画、として見ればもうまったくこれくらいのボリューム感で満足ですね。

愛はある、ただ、孤独もある。孤独であることを認めざるを得ない人生だったのかもしれない。それはわからない。彼女のような特殊な立場を、他の人間が慮ることはなかなかむずかしい。ごくごくふつうの生活をしているごくごくふつうのわたしたちですら、よほど境遇や考え方が似ていないと分かり合うことは難しいのですから。

この映画ね、もしダーレン・アロノフスキーが撮っていたらどうだっただろうって思うんですよ。すごいえげつないことになりそうですよね。そんなことしたら家族が黙っちゃいないでしょうけれどね(笑

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