
ラバーRubber/監督:カンタン・デュピュ/2010年/フランス、アンゴラ
タイヤちゃんの豊かな表情をお楽しみください。
恐怖の殺人タイヤちゃんが人を殺しまくるという映画です。洋盤ブルーレイで鑑賞。この映画、ホラー映画だとは思うのですが、怖いかというとまったく怖くはないですよ。だいぶん淡々としていますが、メタフィクション的な部分もあり、なかなかおもしろかったですね。

あらすじ:タイヤが動いて人を殺します。
砂漠の荒野に保安官(スティーヴン・スピネラ)が現れ、カメラに向かって映画の話をし始めます。
「素晴らしい映画には、理由がない。なぜなら人生は理由のないことでいっぱいだからだ。
今から始まる映画は、これらの理由のなさに捧げるオマージュである!」
などと。『理由がない(no reason)』は、例えば、「E.T.」のエイリアンが茶色である理由とかです。

そして保安官がその場を離れると、別の男(ジャック・プロトニック)が出てきて、『観客の皆さん』に双眼鏡を配り始めます。待ち切れない様子で双眼鏡を覗く『観客の皆さん』は、さて、これから一体何を目撃するのでしょうか?
※ネタバレはありません。
- おすすめ
ポイント - タイヤちゃんの愛らしいようすがたまらん。グロくもなく怖くもないので、ちょっと変わった映画が見てみたいけれど、あんまり怖かったりするのはやだなーと思っている人に。

砂に半分埋まったタイヤちゃんが、ぶるぶる、と震え始めます。とつぜん、理由もなしに命を得たタイヤちゃんは、よろめきながら立ち上がり、ふらふら転がり始めました。
実はタイヤちゃんは超能力をもっており、念力で物を爆発させられるのです。あ、轢き殺すんじゃないんだね。夜になれば木の根元にコテンと横たわって眠るタイヤちゃん。朝になると、水を飲んで、また転がり始めます。

ころころ転がって、立ち止まって、半開きのドアから中をそーっとうかがって、おなごのシャワーシーンをじーっと覗いて、ってやっている。
タイヤちゃんにも、怒りがあり悲しみがあり少年とのふれあいがあるんです。シャワー浴びるしテレビも見るんです。だんだん、人間っぽく見えてくるから不思議です。

タイヤにピントが合っているというだけで、主人公っぽく見えるのがふしぎ。柵にタイヤが立てかけてあるだけなのに。
たぶん、ただただタイヤが転がって人を殺すだけだったら、やっぱり飽きてしまうと思うのね。でも、『観客の皆さん』や『俳優の皆さん』がいることで、流れが変わっておもしろくなっているのが、くふうだね。
特に、「もう演技終えて帰っていいから」って言って一悶着あるあたりおもしろい。見ている人がいる限り、映画は途中で終われないのだよ。
タイヤちゃんはCGではなく、ラジコンだったり人が動かしたりしているらしいんですが、まあこれがほんとうにうまいこと止まったりちょっと戻ったりしてさ、かわいらしかったなー。仲間が燃やされている様子を見て怒りに震えるところとか、すばらしーよ。トンデモ映画っぽいが、意外にきっちり作ってあるなあという印象を受けます。
洋盤で見るともちろん日本語字幕がないので、英語がそれほどわかるわけでないわたしは、すごく一生懸命集中して映画をみることになるんですよね。そうすると、集中してはいりこんでいるぶん、たぶん字幕付きで見るよりもおもしろいと感じているような気がします。でもまあ、おもしろいっておもえるなら、いいことだよねー。