気狂いピエロの決闘The Last Circus/Balada triste de trompeta/監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア/2010年/スペイン
きちがいピエロが人をブッ殺しまくります。
スペインのホラー映画です。ホラー? 怖くはない。スプラッタ…? ともかく、洋盤ブルーレイで見ました。英語字幕、英語吹き替えで見たのですが、英語の吹き替えってへったくそなのね(笑。
8/4より三大映画祭週間2012@ヒューマントラストシネマ渋谷にて公開されます。
(2012年1月30日に書いた記事ですが、公開記念にもう一度アップします。
あらすじ:内気なピエロが乱暴者のクラウンの彼女に横恋慕しました。
わたし、ピエロとクラウンの違いって初めて知りましたよ…。ピエロは泣いているけれどクラウンは泣いていないんだね。主人公は内気なピエロ、ハビエルさん。カルロス・アレセス。お父さんもピエロでした。
お父さんは冒頭のスペイン内戦で、ピエロのかっこうのまま虐殺しまくっている。当時子供だったハビエルは、お父さんみたいなピエロになるぜ、と心に誓います。人を虐殺するようなピエロになりたいという意味でなくて、人気者のクラウンではなく人からバカにされつつも愛されるピエロになりたい、と誓うんですね。
で、りっぱに気弱なおっさんへと成長したハビエルさんが、あるサーカス団に入るところから物語が始まります。
※ネタバレはありません。
- おすすめ
ポイント - ラブストーリーですけれど乱暴で、思いもよらない展開があったりします。おすすめよ。
そのサーカスの団長はセルジオ(アントニオ・デ・ラ・トレ)というクラウン。セルジオはものすごい乱暴者で、誰も彼に逆らえない。セルジオには、ナタリア(Carolina Bang)という曲芸師の彼女がいるのだけれど、あろうことかハビエルさんはナタリアに恋をしてしまい…。ああ、いいことないわ、これぜったいいいことないですからね?
わたしちょっと歴史に弱くてわからないのだけれど、最初のほうと途中に出てきたサングラスの偉いっぽい人はフランシスコ・フランコなのかな? というのを、doyさんのエントリ(スペインの悲しき歴史と壮絶な三角関係 - 『The Last Circus』 - THE KAWASAKI CHAINSAW MASSACRE)を読んでから思いました、たぶんそうだよね。
この映画とスペインの歴史の関係についてはdoyさんのエントリで書かれていますのでそちらをぜひ。
ナタリアとセルジオはDV加害者と被害者なんだけれど、どうも依存しあっているようで、不健康ながらもこれで安定してしまっているんだよね。こういう状態って周りがどうやってもなんともできないんだけれど、ハビエルさんはピュアだから、なんとかしようとしちゃうんだよなー。
ああ…いいことないよねーきっとね、と思っていると、いろいろありまして、ハビエルさんはフランシスコ・フランコの元で猟犬として働き始めるのでした。
…えっ?! 猟犬?!
もちろん猟犬になって終わりというわけじゃないですよ、血のにじむような過酷な変身をのりこえて、ハビエルさんはりっぱな殺人者として生まれ変わるのです。たったひとりの女を守るために、虐殺しまくるのです。
お父さんが虐殺をしたときとは違う理由ではあれども、ふたりとも、大切なものを守ろうとして間違った方向へ進んでしまうんだなあ。人を笑わせたくてピエロになったはずなのに、悲しいことだよ。
まったく先の予測がつかないストーリーと、彩度が低く暗い画面でありつつ華やかさも感じる美しい映像とね、飛び散る血、気狂いピエロと呼ぶにふさわしい暴走っぷり、救いようのない悲しみ、そして映画の中で悪いやつが高いところに登って行くとろくなことにならないよねと思っているとほんとにろくなことにならないクライマックスなどなど、見どころ満載の素敵な映画でした。おすすめです。