リンガー! 替え玉★選手権THE RINGER/監督:バリー・W・ブラウスタイン/2005年/アメリカ
不謹慎なようですが、ギリギリでいいかんじに落としています。
「How's Your News?」というアメリカのテレビ番組があります。発達障害の人にマイクを持たせ、街の人にむかって「How's Your News?」とインタビューさせる番組です。面食らう人、無視する人、答える人、いろいろです。インタビューをしている発達障害の人たちも、だんだん慣れていったり調子こきはじめたりといろいろです。不謹慎なのかもしれないですが、本人も保護者も出演を承諾しているわけですから、いいんじゃないかと思うんですよね。
「リンガー! 替え玉★選手権」は、冴えない普通の「いいひと」が、発達障害のふりをしてスペシャルオリンピックスに出るという映画です。
あらすじ:お金が必要なので、スペシャルオリンピックスに出るという詐欺を思いつきました。
冴えない普通の良い人スティーヴ(ジョニー・ノックスヴィル)は、ひょんなことから大家族のスタヴィ(ルイス・アヴァロス)を雇うはめになってしまいます。ところが、芝刈り中にスタヴィが指を切断してしまったのでさあ大変。手術代を稼ぐため、知的障害者のふりをしてスペシャルオリンピックスに出場することに。
※ネタバレはありません。
- おすすめ
ポイント - 批判されそうな内容ですけれど、ふつーにいいコメディです。主演が「ジャッカス」の人であるせいか、地味ーに痛いシーンがけっこうあります。
コメディ映画としては結構普通の作りだと思います。
よその世界へ飛び込んでいって、最初は仲間はずれにされるけれど、あることがきっかけで仲良くなって、後半にひともんちゃくありつつも、大団円というね。スポーツ映画なので修行シーンもあるし、ロマンスもある。よく出来てる、バランスいいなあっと思います。
取扱方を間違えると観客が不快な気持ちになりかねないネタなので、気を使ったんだなあとも思うのです、あまりにも悪い人というのはでてこないし、特に障害者側にはすごく嫌なやつはいないのでね。
大会6連覇中で嫌なやつっていう設定のジミー(レナード・フラワーズ)も、彼の周りの奴らが嫌なかんじというだけで、彼本人はそこまで悪人ではない。なんか性格悪い人はいます。いらいらしているだけかもだけど。
ヒロインのリン(キャサリン・ハイグル)はボランティアスタッフで、スティーヴの面倒を見てくれるのね。でも彼女には婚約者がいるし、スティーヴのことを障害者だと思っているから優しくしてくれる。リンの婚約者は浮気をしていて、それをスティーヴは知っているが、リンにそのことを言えないの。自分もリンを騙しているし、自分の言ったことを信じてもらえない可能性もあるからね。
スティーヴは障害者のふりをしていることについて良心の呵責に耐えかねて教会で懺悔するのだけれど、そういうエクスキューズがね、ちょっと甘いなあとも思う。
不謹慎な内容とわかっているのなら、いっそとことん不謹慎にしてしまってもいいのではないか。そこで気を使うくらいなら、この題材を扱うのはやめたほうがいいのではないか。
ただ、製作のファレリー兄弟は、「障害者が『普通に』出てくる映画を撮りたい」と思っていらっしゃるようですから、これくらい気を使っているのもわかるんですよね。なにもかも攻撃的にすればいいというものではないですからね。なにもかも優しく柔らかくすればいいというものでもないので、今後に期待したいなあという気持ちです。もうちょっと毒っけがあってもいい、でも、これはいい映画なのでおすすめです。