一命/びんぼう侍と死ぬ死ぬ詐欺

一命/Hara-Kiri : Death of a SAMURAI

一命Hara-Kiri : Death of a SAMURAI/監督:三池崇史/2011年/日本


武士が、腹を斬ると言ったら、斬らねばならん。


時代劇初の3D映画でござる。この映画を3Dにする必要があるかどうかは甚だ疑問でござる。三池崇史の映画は「妖怪大戦争」と「ヤッターマン」しか見たことがないのでござる。

あらすじ:市川海老蔵がひとんちの庭で切腹しようとします。

初老の武士・津雲半四郎(市川海老蔵)が、切腹するためとある大名屋敷(家老は役所広司)を訪れると、このあいだ狂言切腹しようとした不届き者がおったんですよ、という話をされます。

※物語としてのネタバレはありませんが、主人公の主張については言及しています。

おすすめ
ポイント
市川海老蔵のおもしろい顔! 瑛太のすごい切腹。大名屋敷は柱も襖も真っ黒で、欄間とかは真っ赤っかというものすごいデザイン。こんなの見たことないよ。高熱で寝ている赤ちゃんはどう撮ったのだろうか。作り物かなあ。
最近、大名屋敷を訪れて「切腹させてください」と頼み、大名が情けをかけるのを狙っている若い浪人がいるんですね。死ぬって言っておいて周りが止めるのを待っている、で、お情けでお金をもらったり、仕えさせてもらったりするのを期待しているというわけ。それを狂言切腹と呼んでいて、武士としてたいへん情けないことであると、問題になっている。

その狂言切腹をはかった不届き者は瑛太で、屋敷に来たときから怪しかったため、青木崇高が「狂言切腹はけしからん、迷惑だし、死んでもらわねばならん」と言うんだな。瑛太は死ぬつもりなかったので、すごいうろたえるのだけれども、もう、しょうがないと。うちでは狂言切腹は通らんぞと言われて、覚悟を決めて腹を斬る。

このシーンが凄絶で、べつにはらわたが飛び出るとかではないのだが、名演です。瑛太はほかにも道に落ちた生卵を直にすすったりとか、けっこういろいろ無茶やらされている(笑)

それを聞いた市川海老蔵、自分の身の上話を始めるんです。さて、なぜ海老蔵はここへ腹を斬りに来たんでしょうか。というお話です。

えっとね、海老蔵は、反体制、というか、武士の面目がなんぼのもんじゃいと思っている。腹を斬るのがそんなにりっぱなことか、そうじゃないだろうと言うわけ。主張だけ聞くとパンクなんですけれど、海老蔵の理屈ってあまり筋が通っていないんだよな。この映画のおもしろさって、ここにあると思うのね。

おまえらは見栄っ張りでくだらん! と大見得を切る(まさに大見得を切っている、さすがとしか言いようがない)んだけれども、貧乏侍が食うに困って人を騙すようなことをするのが、正しいわけはないんだよ。こっちは貧乏なんだからちょっと察して融通してくれたっていいでしょ! ってことですからね。それって、武士としての面目がどうのとは別の問題なんじゃなかろうか。

ただ、正しいか正しくないかなんかどうでも良いくらいに困っているのは確かで、恥も外聞もない行動を取らなければならなかった事情っていうのも、まあ、わかる。わかるが、タカリだからね。海老蔵は、家老の役所広司に向かって「あなたがわたしの立場だったらどうするの!」って言いますけれど、逆に海老蔵が役所広司の立場だったらどうするのよ、ってことにもなっちゃう。
主張の基盤のもろさがおもしろいなあ。

まるで「死ぬって言ったんだから死んでくださーい」と切腹を強要した大名側が悪いかのようだが、世話をしたわけではない人間が自分ちの玄関先で腹を斬るって言い出すだけでも迷惑なのに、死ぬと言い出した者をなぜ止めてやらにゃならんのだ、おまえんちの事情なんか知らん、という言い分もわかるわけ。わたしはどちらかというとこっちの気持ちのほうが解るなあ。

子供のため、家族のため、生きるために行うことは素晴らしいから、周りは配慮してくださいよ、ほんとうは生きたいから止めてくださいよ、察してよ、みたいなのはね、わたしはわからん。どっちかというとウザいと思う。ただ、なんとなく、そういうことが言いたい映画じゃないんだろうなとも思っていますが、武士道とか、見栄とかは、ちょっと理解がしにくいので、自分にわかる範囲のことしか言えないんですよ。

海老蔵のアンチ武士道っぷりは徹底していて、相手を殺さない。これって、相手を武士として『立派に』死なすわけにはいかないと考えたんですよね? そんなことをしたら自分は生きて帰れないこともわかっている。けれども、あえてそうすることで自分はアンチ武士道な武士としての人生をまっとうしようと…したのかな? うーん、武士道が絡んでくるとやっぱりわからないや。すみません。身も蓋もない言い方をすれば、ヤケクソだったんじゃないのかとも思ってしまう感じよ。もう何も失うものがないからね。そしてわたしは、そのヤケクソさ加減をおもしろいと思ったのでした。

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