
カンパニー・メンThe Company Men/監督:ジョン・ウェルズ/2010年/アメリカ
トミー・リー・ジョーンズがひたすら困ります。クリス・クーパーもひたすら困ります。
とにかく、おじいちゃんが、困っていて、ちょうかわいい!
おじいちゃん、かわいいですよね。おじいちゃんが困ったり、ご飯を食べたり、わがままを言ったり、悩んだりしているようすを見るのがすごく好きです。映画に出てくるおじいちゃんがかわいすぎて、おじいちゃん映画ブログを立ち上げました。ゆっくりやっていくつもりですので、よろしくお願いします。

あらすじ:大企業をクビになったので、困ります。
主人公はベン・アフレックです。30代後半、車も家もローンが残っていて、2人の子持ち。営業職でばりばり働いていた…のに、突然解雇されてしまいます。あわわ。
クリス・クーパーは、社長のクレイグ・T・ネルソンと一緒に、会社を大きくしてきました。
また、トミー・リー・ジョーンズは、リストラに反対しています。
※ネタバレはありません。
- おすすめ
ポイント - おじいちゃんだらけでたまりません。おじいちゃんがずっと困っていてちょうかわいいです。おじいちゃん好きは必見。地味ながら人情味のある良い映画でした。

この映画で非常に印象的なのは、立ち姿です。すっと立っている背中だけで、呆然としているのか、焦っているのか、威圧感を出しているのか、決意表明なのかが伝わってくるんですね。また、今何が起こっているのか、次に何が起こるのかも、立ち姿を見ただけで予想がついたりする。これすごいですね、だって立っているだけですからね。
男は背中で語るなどと申しますが、まあ、背中はなにも語りません、ふつう。背中「だけ」見てもわかんないです、ふつう。
じゃあ、なぜわかるのかというと、姿勢とか、服装とか、背景とか、そこに至るまでに描かれるものです。
同じ立ち姿でも、それ以前にどんなことが起きたかで印象が変わるから。
ここのところの描き方がじつにうまい。おおげさにせず、やりすぎもせず、いいかんじのところで、すっと立つ。ああ、かっこいい。無職だけど。

ベン・アフレックは若いし、見栄もあるし、ついこないだまで大企業に勤めていたこともあって、高望みしてしまって再就職がなかなかうまくいかないんですね。でも、奥さんには「大丈夫大丈夫、節約とかしなくていいし」とか言っちゃう。ほんとうに大丈夫なんじゃなくて、そうあってほしいから、言っちゃう。現実見えてないんですよ。
奥さん(ローズマリー・デウィット)のほうは現実的で、パートに出たり、だんなを励ましたり、家を売る計画を立てたりしている。いい奥さんです。

ベン・アフレックの義兄はケヴィン・コスナー。大工です。かっこよかった。もともとベンのことは嫌いなんです。もう明らかにホワイトカラー憎しというかんじ。でも、がさつなやさしさを見せたりするのね。この人だってほんとはきゅうきゅうなのにさ。
この映画ね、基本、やな人いない。いなくはないですけれども、なんかもうすっげーやなかんじ! っていうのはないのね。

クリス・クーパーは、もうすぐ60歳だし、再就職支援所では履歴書にけちをつけられたりしてぐったりだし、奥さんは家に帰ってくんなって言うし、もう、しょぼしょぼなんですよ。
クレイグ・T・ネルソンと一緒に、工場のときから超がんばって会社を大きくしてきて、30年も勤めたのに、いきなり切られちゃう。仕事人間だったから、人生の半分以上を会社で過ごしてきたから、それがなくなってしまうと、もう、どうしていいかわからない。しょぼしょぼ…。ずーっと困った顔していて、べろべろに酔ったりして、ああ、はらはらするわ。強面の困り顔かわいいわ。左の写真とかもうちょうかわいいわ。たまらん。

トミー・リー・ジョーンズもね、おおむね困っています。リストラ反対! と言っている。愛人のマリア・ベロはリストラ係で、そのせいでさらに複雑な思いを抱いたりする。はあふう、困った。
経営的にはリストラしなきゃならないかもしれないが、倫理的にはどーなのよと。それって、人としては良いことなのかもしれないが、会社としてはちょっと甘いというか、そうもいかないだろうというところなんですよね。そこは、トミー・リー・ジョーンズがただ甘い人ということにならないような事情ももちろんあります。
と、おじいちゃんがずっと困っていてちょうかわいいというですね、もうわたし、おじいちゃんがしょんぼりして「ふー」「はあ…」とか言っているの見ているだけで楽しいので、これもう、たまらんですよ。

それから、この映画に出てくる男の人はみんな仕事をちょう一生懸命しており、わたしの嫌いな「おなごによろめいて大切なことがおろそかになる」ていうのがいっさいないのですね。もう最高。
というわけで、わたしの嫌なものがまったく入っていないばかりか、わたしの大好きなおじいちゃんが、困っていて、たまらんのですよ。
わたし、人が困っているの見るの好きなんです。人だけでなくて猫とかもですけれど、困っているのがかわいい。困り顔って可愛いじゃないですかー!

お話としては、どん底から這い上がるっていう、まあよくあるんですけれども、やはりキャストがほとんどみんな高齢というのもあり、非常に落ち着いているんですね。ベン・アフレックはクビにされて怒鳴ったりするけれども、他の人は、ギャーッてわめいたり、誰かを殴ったりとかしない。ばかー! って石を投げたりはします。でもそれくらいなの。
だから、ラストで船が出てゆく、遠くでスーッと出発するのがね、じわりと余韻を残すんです。派手なところはまったくないが、良い映画でした。だっておじいちゃんがかわいいからね。
正直、おじいちゃんがかわいらしすぎて、映画として正当な評価ができているのかどうか自分でもまったくわかりません。だからむやみに人におすすめはできないんですが、おじいちゃんが好きな人はぜひごらんになってください。おじいちゃんがかわいい。かわいいよ!