ゴーストライター/陰謀の犠牲者は、誰?

ゴーストライター(THE GHOST WRITER)

ゴーストライターTHE GHOST WRITER/監督:ロマン・ポランスキー/2010年/フランス、ドイツ、イギリス


ユアン・マクレガーがピアース・ブロスナンの前でおどおどします。


ロマン・ポランスキー監督の映画はですね、見たことがないです。「ナインスゲート」は見ました、でも「戦場のピアニスト」も「ローズマリーの赤ちゃん」も見ていないんですよ。なんでですかね? たまたまですね。
で「ゴーストライター」、いつもどおり何も情報を入れずに見てみましたよ。そうしたら、これはすごくおもしろかったですねー。どこをとっても褒めるところしか思いつきません。

あらすじ:元英国首相のゴーストライターとして雇われた男が陰謀に迫る。

ゴーストライター(THE GHOST WRITER)ゴーストライターの主人公(ユアン・マクレガー)は、ものすごく普通の男なのです。作家になれるほどの技量もなく、仕事が速いのを売りにしており、とはいえそこを強く推しているわけでもなく、家族もなく、政治に興味があるわけでもなく、過去のこともよくわからない。

このなにもなさは、彼に名前がないことを考えても、観客が自分に置き換えられるキャラクターっていうことなんですよね。持って回った言い方をしましたが感情移入がしやすいということです。感情とはちょっと違うかな、とにかく、入りやすい。
ネタバレしています。

おすすめ
ポイント
おじいちゃん好きとしては、次々にいろんなおじいちゃんが出てきてくれるので、もうまずそこだけで満足です。たいへんよかった。おすすめです。
ゴーストライター(THE GHOST WRITER)ユアンは英国元首相のアダム・ラング(ピアース・ブロスナン)が滞在するアメリカの島に呼ばれ、取材をするわけです。

でも元首相はユアン・マクレガーを雇った直後に戦犯として追われる身になってしまうんですね。あーら困った。どうしよう。めんどうな時期に仕事を受けてしまったなあ。
ゴーストライター(THE GHOST WRITER)もう仕方がないので仕事をするんですが、元首相の奥さんルース(オリヴィア・ウィリアムズ)はめっちゃ気が強くて秘書のアメリア(キム・キャトラル)と仲が悪いわ、元首相は奥さんより秘書を信用しているわ、メイドはおどおどしているわ、警備員は感じ悪いわ、元首相は一連の出来事で消耗しちゃってるわでものすごいやりにくいんですよ。

しかも、前任者が書いた原稿を外に持ち出すことは許されず、建物の外にはデモ隊がいて「うそつき!」って罵られたりして、はあ、もう、ぐったりです…。
ゴーストライター(THE GHOST WRITER)このね、完全に巻き込まれたユアンの居心地の悪さや、ちょっとうまくいきそうでやる気になっていたのが秘書の一言で心を折られてしょんぼりっていう心境を、映像で表現してくれるんですね。

外で掃除をしている人がせっかくゴミを集めたのに風で全部吹き飛ばされちゃうとか、建物の中のものすごい冷たい感じとか、飾ってある絵とかでね。季節は冬だし、風が強くて天候も不安定なんですよ。めちゃめちゃ不吉なの。
ゴーストライター(THE GHOST WRITER)とはいえ全体的に暗いかというとまったくそうではないんです。この映画の良いところはそこなんですよね。

まず、会話がものすごく心地良いんです。やりとりが。やりとりを聞いているだけで気分がいい。ピリッとしたジョークも効いていて、人物の関係がそれで把握できていくのが、ほんと気持ちいいんですよ。自己紹介とか誰もしないですからね、それでどんどんわかっていくんだもの。
ゴーストライター(THE GHOST WRITER)それからわたしが毎回しつこく言っているテンポの良さなんですけれども、この映画は完璧なんですね。完璧にテンポが良い、素晴らしいです。緊張と緩和のバランスもすばらしい。感動しました。無駄がないだけでなく、身を任せていれば安心できる。もう、こういうのは監督や編集の経験なのかな〜。

しかしわたしが褒めるときの語彙の貧弱さはなんとかならんものかね。
ゴーストライター(THE GHOST WRITER)お話のほうはですね、あからさまにあやしい人が本当にあやしいという、そう聞くとあんまりにもあんまりな展開だけれど、むしろそこがたまらなく滑稽に見えてくるんですね。で、あやしいといえば全員あやしい(笑) あやしい人しか出てこないんです。みんなこそこそしているの。

ユアンが肝心な情報をぐぐって見つける っていうのはほんとバカじゃないかしらと思うけれど、もう、それくらい別にいいよここまで良ければ…。
ゴーストライター(THE GHOST WRITER)それから元首相のピアース・ブロスナンですが、本心を話さないんです。それはもちろんユアンを心から信じているわけではないというのと、自分の状況がまずいという焦り、不安のせいなんですけれども、他人に対する不信感の表現がすばらしかった。

彼は秘書にだけ心を許しているようなんですが、別にベタベタしているわけでもない。人との距離感が絶妙なんですね。この人のほんとうの気持ちは最後までわからないんですが、映画を見終わってから思い返すとものすごく気の毒で、一国を率いる立場にあった者の孤独が伝わってくるんです。
ゴーストライター(THE GHOST WRITER)これ、他の人はどう感じるかわからないんですけれども、ある人が死ぬ直前、カメラの一瞬のゆらぎで「あ、死ぬ?」と思ったんです。なんかすごかった。別にその人の心境を表現しているわけではないのね。本当に一瞬の不安定さで不吉な感じが出ていたと思います。

ラストはちょっとゾーッとする感じ、だけれどもやっぱり暗くなりすぎず、謎がすべて解けた爽快感もあるし画の美しさもある。最後の一瞬まで楽しんで見られる、素晴らしい映画でした。おすすめです。
photo
ゴーストライター [Blu-ray]
Happinet(SB)(D) 2012-02-02
評価

by G-Tools , 2011/11/25

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  • 映画批評ってどんなモンダイ!
  • 2011/09/01 2:42 PM
ランキングクリックしてね←please click いろいろありすぎたロマン・ポランスキー監督去年チューリッヒ映画祭の授賞式出席で滞在中のスイスで、33年前の少女強姦関連でスイス当局から身柄を拘束され、 4億円の保釈金を払って自宅監禁になった久々の新作、
  • 我想一個人映画美的女人blog
  • 2011/09/01 10:01 PM
 【ネタバレ注意】  この映画は面白い。  あなたがまだ『ゴーストライター』を観ていないのなら、それだけ知れば充分だろう。  これは上質なサスペンスであり、芳醇なワインを味わうように渋みを楽し...
  • 映画のブログ
  • 2011/09/12 8:16 PM
年間ベストの季節です。今年はわたしにしては新作映画を多く見ているし、おもしろい映画も多かったので、ジャンル別にベストとワーストを選出してみました。ジャンルわけは当ブログのカテゴリに準じます。上半期のベストテンはこちら。 2011年上半期新作映画ベスト10
  • 映画感想 * FRAGILE
  • 2011/12/28 11:59 AM
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