ツリー・オブ・ライフ/宇宙、人生、すべての答え

ツリー・オブ・ライフ(The Tree of Life)

ツリー・オブ・ライフThe Tree of Life/監督:テレンス・マリック/2011年/アメリカ


ショーン・ペンがエレベーターで天国に行って戻ってきます。


テレンス・マリック監督の映画を今まで見たことがなく、ブラッド・ピットも(いい俳優だとは思うけれど)特に好きというわけではないんですが、Twitterで流れてくるみんなの感想がおもしろくって見に行きました。
だいたいどういう映画なのかを先に知って心の準備が出来ていたので、面食らうことはなかったですね。
予告の印象だけで見るとすごい戸惑ったと思います。というか予告の印象だけでは見なかったなあ。

今回のエントリのタイトルは、きっと誰かともろかぶりすると思うけれど、このまま投稿しちゃいます。
しょうがないよね(笑

ツリー・オブ・ライフ(The Tree of Life)

宗教的なイメージがこってり入っていますが、わたしはキリスト教にあまり明るくないので、そのあたりについては触れずに書きますね。

あらすじ:優しいお母さんと厳しいお父さんに育てられて、おとなになりました。

1950年代のテキサス。母(ジェシカ・チャステイン)と父(ブラッド・ピット)と3人の息子。光が揺らめき、宇宙が始まる。微生物の誕生から海へ、そして陸へ上がるとそこには恐竜が! 隕石も落ちるよ!


ネタバレしています。でもネタバレとかあんまり関係ない映画だと思うよ。

おすすめ
ポイント
おもしろいですが、人に薦めるかと言ったら勧めない映画です。
見終わった後ドッと疲れました。せめてあと30分短ければ…。
ツリー・オブ・ライフ(The Tree of Life)

地・水・火・風・空の5つのエレメントが頻繁に出てきます…って書いといてあれですけど、五大ってヒンドゥー教でしたね…。
ビジュアルエフェクトには「2001年宇宙の旅」や「未知との遭遇」のSFX、「サイレント・ランニング」監督のダグラス・トランブルが「ブレードランナー」以来29年ぶりに長編映画でSFXのスーパーバイザーを担当しています。


ツリー・オブ・ライフ(The Tree of Life)

おおざっぱに言うと、メタファーの洪水のような映画でした。母親と子供だけのシーンは多幸感にあふれていて(母親の衣装がちょうかわいい!)、キラキラしています。お母さん、宙に浮いちゃうからね。けっこう無邪気な人で、庭のスプリンクラーの水を浴びまくって服が透けたりとか、膝を妙に映したりしてて、ちょっと性的なイメージもあったり。

家の中はちょうキレイで、生活感がないんですね。これはショーン・ペンのパートも同じで、お前、そこ、ほんとに住んでるのか…? と思うくらいぺかっぺかな内装なんです。


ツリー・オブ・ライフ(The Tree of Life)

でも、お父さんが出てくると急に画面に緊張が走って、生活感も出てくるんですね。お父さんは服装もくたびれているの。わ、わかりやすい…。

ブラッド・ピット、耳の下あたりの頬やおしりの肉付きがむっちりしていたね、50歳も近くなるともうおっさん臭が漂ってくるんだね…。同い年のジョニー・デップはそうでもないけど。

お父さんは工場で働いているけれど、出張で世界中を旅したりもしてて、具体的にはどういう仕事をしているのかはわかりません。ショーン・ペンも同じで、会議したり指示出したりしているけれど、なんの仕事なのかははっきりわからない。


ツリー・オブ・ライフ(The Tree of Life)

長男はとにかくお父さんのことがだいっきらいで、「お父さんがダメって言ってたこと、ぜーんぶやっちゃうもんねー!」とばかりにカエルを爆破したり窓に石をぶつけたりお母さんをいじめたりするわけです。

でも、ふっと気づくと「あれ、僕、お父さんのことすごい意識してる…?」という気持ちがわきあがってきて、そうなるとお母さんのこともなんかイヤになってきちゃう。
お父さんも嫌い! お母さんもなんかヤダ! と、まあ、思春期だったら誰にでもあるよね…。


ツリー・オブ・ライフ(The Tree of Life)

大人になったショーン・ペンは仕事中なのにちょうぼんやりしていて、あんまり調子がよくないみたい。
なので、ごつごつした岩場を歩いたりします。なんか、むなしいらしい。見渡すかぎり岩場なんだよね、どうしたらいいかわかんないの。あっちへうろうろ、こっちへうろうろしますよ。すべてのシーンで画面の端に『(心象風景)』って書いてあるようだったよ。

それで、そういえば子供の頃はよかったナー、なんて思いながらエレベーターに乗るわけです。


ツリー・オブ・ライフ(The Tree of Life)

すると、なんということでしょう、エレベーターで屋上へ来たと思ったら、天国だったよ!

天国には、『あの頃』の家族や友人がいて、あんなに嫌いだったお父さんともハグしたりして、「そっか、俺、お父さんのこと、わかった気がするよ…!」とすっきりするんですね。で、すっかりすっきりしたので、またエレベーターに乗って元の世界に戻るという。ちょっと手軽に行けすぎなんじゃないですか(笑

お父さんのこと、わかんなかったけど、わかった! って、「ビッグ・フィッシュ」と同じなんですよね。


ツリー・オブ・ライフ(The Tree of Life)

他にもこういう映画はありそうだし、テーマとしては陳腐なんです。だけど、ありがちな出来事に見えても本人にとってはものすごい重大なことだし、普遍的なんじゃないでしょうか。個人的な話のわりに生活感のディテールが欠けているのはそのせいかな。

しかし思春期引きずり過ぎなんじゃあないかしらん、大人になってからは父親とぶつからなかったのかね、とも思いますけれど、この人にとっては、思春期の体験こそが重大な出来事だったんでしょう。


ツリー・オブ・ライフ(The Tree of Life)

というわけで、お父さんのことをいろいろ考えてみた、思えば子供の頃が一番解り合ってなかったような気がする、自分が生まれる前はどうだったんだろう、そもそも自分が今ここにいるのは地球があるからだよね…などと、ショーン・ペンが個人的かつ、やたらに壮大なことを考えて、お父さんとわかりあいたいと思う、わかりあったと思う、という映画でした。
わたしこれはほとんどの部分がショーン・ペンの回想と想像と心象風景だと思うの…。


ツリー・オブ・ライフ(The Tree of Life)

ショーン・ペンの役名はジャック・オブライエン。Jack O'Brien。JOB。冒頭で引用されるのがヨブ記なのね。ブラッド・ピットの役は最初ヒース・レジャーのはずだったそうです。

この映画、他の人の感想読むのがおもしろいんですよね。褒めていてもそうでなくても、どれも納得できちゃうし気分悪くならないからいいよね。


ちょっと気になったので、普段は見ないYahoo映画のユーザーレビューを見てみましたよ。
鬱病が悪化した」っていうレビューがあったのですが消されてしまったようです。残念…。

Yahoo映画「ツリー・オブ・ライフ」ユーザーレビュー/★5つのレビューより部分的に引用
最近時間に追われることが多かった私だが、この映画をみて久しぶりに『時』を感じることができた。音楽、映像ともに素晴らしいと思う。今の私にとってこの映画は、メンタル面での薬になった。/monkey_green6さん
この方はほとんどのレビューが★5つか4つで、3つがついているのは「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」だけでした。

少なくとも『死ぬまでに観たい映画1001本 』に掲載されている作品ぐらい全部みてから映画論始めてくださいね。基本中の基本だから。
まあ確かにシネコンでやるような子供映画ではないのは認めますがね。
ブラピやショーンペンが出てるから見ようぐらいの軽い気持ちでいくからこうなるのです。彼らも自らのアーチスティックな野望というものがあるし、いつもいつもミーハーなファンばかり相手にしてられないから。
間違いなくハリポタやトランスフォーマーを観る層向けにつくられてないです。
なにせマリックの映画だから。
え?そんなことも知らないで見に行ったの?
まるで学校のいじめみだいだね。あいつわけわからんから排除してやろうかみたいな。
自分と違う考え方は許せんみたいな。
ああ〜。こころせまー。/fc_smicardさん
お怒りのごようす。この方がレビューを投稿している映画は1本だけです。
死ぬまでに観たい映画1001本」全部見てないです、すいませんすいません。

他には「パワースポットにいるようだった」とか。長文の感想が多いですね。

Yahoo映画「ツリー・オブ・ライフ」ユーザーレビュー/★1つのレビューより部分的に引用
期待して観に行きました。ストレス解消に映画に行ったつもりが、映画を観ることでストレスがたまり(笑)疲れている人がこの映画を観るとますます疲れるので、お薦めしません。/mickyminnypoosanさん
この方がレビューを投稿している映画は1本だけです。
★5つのmonkey_green6さんと真逆の感想でおもしろい。

この映画を高評価している方は実際に哲学とは何かということを知っているのでしょうか?
哲学とは基本的に物事の根本や原理を検討してそれを極める学問です、つまり、「必ず」自分の意見や思考を他人がわかるように、なぜ自分はこう思うか、ということを理論的に、説得できなければいけないのです。 それが難しいために過去から今現在に引き続き、大勢の学者がそれぞれの分野で検討し続けています。
この映画は 哲学的要素は、あるとすれば全体の10%位でしょう。しかも、他人を納得させられないこじつけた自分本位のそれらしい理屈をドキュメンタリー映像やクラシック音楽で虚飾しているだけだと思います。
自分たちは哲学を専攻し、それを職としています。が、本日 仕事仲間とこの映画を観て、
これは 哲学的要素があるように錯覚させられる映画だと実感いたしました。
哲学ではなく、監督の自己満足の作品だと思います。
ちなみに 有名な哲学者のサルトルは 一切を創造する神の存在を否定しています。/socrates_sartreさん
この方がレビューを投稿している映画は1本だけです。「哲学的」っていうレビューがけっこうあるので、それに対して書かれたっぽい。

他には「高校1年の僕にはわからなかった」とか「CMが悪い」とか。

これを書いている間にもどんどん新しい投稿が増えて行ってもう追えません。
わたしを離さないで」を見たとき、カップルが「Yahoo映画のレビューで評価が高かったから見に来た」って言っているのが聞こえたんですよ。Yahoo映画って、参考にする人多いんだね。

それから、『ツリー・オブ・ライフ』公開に寄せて/映画旧作鑑賞日記 - あ な た は し に ま し た (仮)で言及されていた『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』『ツリー・オブ・ライフ』など、7月末〜8月末の新作6本を辛口ジャッジ! - 4 - 新作をメッタ斬り!月1辛口座談会を読んだんですけれども、これは酷かった…。
「シネフィルが一人でじっくり考えながら観る映画ね。」

『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』『ツリー・オブ・ライフ』など、7月末〜8月末の新作6本を辛口ジャッジ! - 4 - 新作をメッタ斬り!月1辛口座談会
おーい(泣 頼むよ…。そういうふうに投げださないで…。

photo
ツリー・オブ・ライフ ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 2012-03-07
評価

by G-Tools , 2011/11/25

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