エッセンシャル・キリング/9.11後の「ランボー」

エッセンシャル・キリング(Essential Killing)

エッセンシャル・キリングEssential Killing/監督:イエジー・スコリモフスキ/2010年/ポーランド・ノルウェー・アイルランド・ハンガリー


ただ、生きるために逃げる。


これは非常に説明の少ない映画でですね、主人公がセリフを言わないこともあり、出来事の背景なんかもほとんどわかりません。冒頭でアメリカ軍兵士がテロリストがどうのと言っているので主人公もそうなのかなあと思うんですけれども、そこもはっきりしていないんですね。

エッセンシャル・キリング(Essential Killing)

あらすじ:アメリカ軍に追われているので、雪山を逃げます。

ムハンマドさん。ヴィンセント・ギャロ。エンドロールで名前がわかりますけれど、劇中には出てきません。砂漠の民です。国籍はわからない。イスラム教徒らしい。
アメリカ軍に捕まり、拷問されます。理由はよくわからない。まあ発砲してましたんで、ゲリラなんでしょう。

ネタバレしています。でもお話はあってないようなものだよ。


おすすめ
ポイント
解釈は観客に丸投げという映画です。
エッセンシャル・キリング(Essential Killing)ムハンマドさんを乗せた護送車が事故を起こします。いったんは逃げるムハンマドさんですが、投降するんですね。でも、相手が油断してたので、銃を奪って逃げることにしました。

さっきまで砂漠にいたのに、今は雪山です。ここはどこなんだ。困ったなあ。雪とか見たことないし。寒いし。お腹すいたし。困ったなあ。

そんなムハンマドさんを、ヘリコプターが追ってきます。いかん、逃げよう。
エッセンシャル・キリング(Essential Killing)ムハンマドさんは逃げながら木の皮を食べたりアリを食べたり木の実を食べたりします。で、必要だったら殺しをしたりする。たまに幻覚を見たりもします。

あのね、はっきりいってこれだけなんです。この映画を見て何をどう感じるのかとか、ここに込められたメッセージはなんぞやとか、そういうのは観客が汲み取って咀嚼していくしかないんですね。当然答えも用意されてはいません。
エッセンシャル・キリング(Essential Killing)逃げているだけとはいえ一応起伏もあって、たとえば通りかかった子持ちの女を襲っておっぱいをちゅうちゅう吸うとか、口のきけない女の家に逃げ込んで介抱してもらうとか、そういうのはあります。で、それも、母性との関係であるとか、コミュニケーションできないもの同士の心の触れ合いとか、なんかそういう感じのメッセージみたいなのがあると思うんです。

わたしはわりと映画を見ていてヘンに深読みしたりするのは好きな方なんですけれども、こう、ズバーンとのめり込んだ時にはそういうのもあるんですよ。でもこの映画はちょっと乗りきれなかった。これくらいの情報量の少なさというのも、嫌いではないんですが…。
エッセンシャル・キリング(Essential Killing)ムハンマドさんが発話しない理由はなんとなくわかるんです。この人は、話さないだけではなく、性格というのもほとんどないんですね。人としてものすごくそぎおとされたキャラクターなわけです。だからたぶん、人間の根幹のところを描いているのだと思います。

で、人間が極限の状態に置かれ文化的な背景も失われたとき、そこに残っているのはなにかというと、生への執着、動物的な本能だけになっていくんですね。

このかんじは、けっこう「ランボー」に近いです。
エッセンシャル・キリング(Essential Killing)もうちょっとムハンマドさんがどういう人なのかわかれば、「ランボー」との明確な比較もできたのですが、国籍すらわからないとなると下手なことは言えないんですよ。アメリカ同時多発テロ事件と絡めて、というのも、書けそうなんですがちょっと危険な気がする。
イスラム教徒っぽくてゲリラみたいだからアルカイダだ! とか、言うと、ものすごい差別的じゃないですか。怖いので、こういったあたりについては、他の方にお任せしようかなあっと思いますね。
エッセンシャル・キリング(Essential Killing)ちょっといろいろと突き放しすぎなのと、紐解いていくことができそうなのにそこまで情熱をかたむけられないこっち側の問題とが重なって口ごもる、みたいになっちゃって残念でした。

ただ、これがハマる人にはぴたっとハマって、ものすごくいろいろな思いがわきあがってくるんじゃないのかなあとも思います。こればっかりは相性なので、見てみないとわかんないですね。
photo
エッセンシャル・キリング [DVD]
紀伊國屋書店 2012-01-28
評価

by G-Tools , 2011/11/30

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