わたしを離さないで/リリカルで残酷なSF映画

わたしを離さないで(Never Let Me Go)

わたしを離さないでNever Let Me Go/監督:マーク・ロマネク/2010年/イギリス


人の魂とはなにか。

カズオ・イシグロの同名小説が原作です。わたしは本をまったく読まないので、もちろん原作も読んでおらず、またこのタイトルとポスターでは絶対に自発的には見ない種類の映画と思っていました。
先日、たいへん映画の好みが似た女性と知り合いまして、その方から強くおすすめされたことがきっかけで、まだ上映している映画館を探してすべりこみで見てきました。見て良かった、ほんと、これほっといたらレンタルでも見なかったと思うので、教えてもらってほんとに良かったです。何も知らずに見たのも衝撃度が上がって良かったですね。

わたしを離さないで(Never Let Me Go)

あらすじ:自然に囲まれた寄宿舎、ヘールシャムで育った子どもたち。彼らには過酷な運命が待ち受けていた。

1978年。キャシー(イソベル・メイクル=スモール)、ルース(エラ・パーネル)、トミー(チャーリー・ロウ)の3人は、に外界から隔絶された寄宿舎ヘールシャムで育ちます。彼らはその生活になんの疑問も抱かず、のびのびと暮らしていました。

しかし、あるとき新任のルーシー先生(サリー・ホーキンス)から、自分たちの運命について真実を告げられてしまいます。


おすすめ
ポイント
言葉にすると何かが失われてしまいそうで、あまりなにも言えません。
内容を知らないのなら知らないままで見たほうが良い映画かと思います。おすすめです。

※以下、極力避けてはいますがネタバレを多少含みます。
わたしを離さないで(Never Let Me Go)

1985年。18歳になったキャシー(キャリー・マリガン)、ルース(キーラ・ナイトレイ)、トミー(アンドリュー・ガーフィールド)は、コテージという施設へ移動します。そこには別の寄宿舎からやってきた人たちも住んでおり、キャシーたちははじめて外界の(とはいえ境遇は同じなのですが)人と接することになります。


そこでキャシーたちは、新しい仲間から「ヘールシャムは特別な寄宿舎なんでしょ、こんな規則があるって噂を聞いたんだけど」と言われるのです。

この映画、大まかな設定は「アイランド」と同じなんです。マイケル・ベイはあほうの子なので(そこが好きだけど)「アイランド」はたいへん大雑把な映画でしたが、「わたしを離さないで」は同じ設定ながら真逆とも言える切なさと残酷さに満ち溢れた映画です。

こういう設定の映画はたぶん他にもあると思うんです。テーマとして作り易いし、倫理的な問題があって現実にはありえないけれどもみんなが一度は考えるようなこと、SFだからこそできる設定なので。

わたしを離さないで(Never Let Me Go)

これがね、ありがちな設定なのに突出している映画となったのは、抑えた色彩と湿度を感じる空気、一見ありそうながらどことなく奇妙な雰囲気を持つ風景、手堅くきっちりしたカメラワークと安定感のある音楽、なによりも21世紀につくられたSFでありながら、舞台が70年代から90年代というところですね。

こういった、画がノスタルジックである映画は、ときとして卑怯に見えてしまうことがあります。雰囲気で丸め込んでいるんじゃないかと、そういう疑問を抱くとダメになってしまうんです。


スーパー8」のテクニカルなノスタルジーをわたしが受け入れられなかったように、「わたしを離さないで」のクウネル系ノスタルジーとでも言いましょうか、これは受け入れられない人がいるだろうなあとは思います。そもそもこの雰囲気に郷愁を感じるというのはあまりないのかも、ノスタルジーとは違うのかなあ。わたしは物珍しさも手伝って、たいへん美しいものを見るような気持ちで見ていました。「キッズ・オールライト」もそうですが、ふだんまったくスルーしている感じの映画は新鮮で、それだけでオッケーみたいなところは、あります。

わたしを離さないで(Never Let Me Go)

また設定そのものに関しても、なんでこの人たちは逃げないんだとか、世界が狭すぎるんじゃないかとか、言い出してしまうとやっぱりそこが気になってダメと感じるのもしれません。

逃げない理由は見ていればわかりますし、外の世界はどうなっているんだろうというのも、主人公たちの知る範囲で明らかにされる部分があるので、つじつまがあっていないというわけではないんですね。


でもねわたし、思うんですけれど、映画というのはまずテーマ、描きたいものが先にあって、ほかのいろいろな要素はあとからついてくるものなんじゃないかと思うんですね。現実にないことを描いているのだから、どうやっても穴があったりするんです。でも、そこはまあ、いいじゃないかと。大切なのはそういうことではない。ほら、ドラえもん映画でね、どっか行きたいんなら冒険せずにどこでもドア使えばいいじゃんって言ったら終わるじゃないですか。冒険自体が目的なのだから、どこでもドアは使えないじゃないですか、物語の目的に合わせて必要なひみつ道具が出てくるというわけですよ。それでね、この映画も、伝えたいことがまずあって、すべての出来事や人間関係はそのためにあるんです。

わたしを離さないで(Never Let Me Go)

この映画、主人公たちは恋をしたり友情を育んだりということが物語の中心になっています。三角関係なんですね、それでああだこうだする。共同生活しているので、カップルがセックスしている声が聞こえてきたりして、いやだいやだとかやってるんです。

わたしは恋愛映画にあまり慣れていないのと、まあ正直恋愛がメインの映画にはもとより興味があまりない、誰かの立場になって感情移入したりとかないんですよ。それでね、物語の終盤まで、そっかこの映画は設定はSFだけれども恋愛映画なのかなあっとか、一歩引いた目で見ていたんですね。


ところが、クライマックスである人から発せられるたったひとことのセリフ、ほんとうにこれはたったひとことで、しかもよくよく考えれば最初っからわかっていたことを簡潔に述べただけのセリフでですね、言い表せないほどの衝撃と絶望が一気に襲ってきて、声が出るかと思うほど泣きました。これはもうたまらなかった、どうしようもなかったです。

エンドロールで流れる音楽がね、ほんとうにもうなんといったらよいか、言葉で書くとどうしても陳腐な表現になってしまって困ります。それまでの主人公たちの生き様、恋愛のあれやこれやなんかも含めたすべてがなんて残酷なのだろうと、せめて彼らを過去にとどめておけるならばと思わざるを得ませんでした。おすすめです。

photo
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評価

by G-Tools , 2011/08/10

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