ミックマック/見世物小屋反戦映画

ミックマック(Micmacs a tire-larigot)

ミックマックMicmacs a tire-larigot/監督:ジャン=ピエール・ジュネ/2009年/フランス


ジャン=ピエール・ジュネ的「まぼろしの市街戦

ロスト・チルドレン(LA CITE DES ENFANTS PERDUS)ロスト・チルドレン」がものすごく好きでした。あまり映画を見なかったわたしが、一番好きな映画でした。

ロスト・チルドレン」の監督の最新作だ、と、いそいそと劇場へ行き「アメリ」を見たとき、なんだこれ、この居心地の悪さはなんだ、と思ったものです。ぜんぜん合わなかった。ヘンな顔の人も奇形も出てこないなんて、って思ったんですよね。なんか明るいし、なんだこれ。

まあようするに、ジャン=ピエール・ジュネのことを「『ロスト・チルドレン』の監督」としてしか見ていなかったんです。わたしの好きなあの映画をもう一度撮ってくれ、っていう。

マルク・キャロについてもそう、「ヴィドック」はキャラクターデザイン、「エンター・ザ・ボイド」は美術監督ですけれど、「ヴィドック」はゴシックだったんでともかく「エンター・ザ・ボイド」はその年のワーストに選んでいるくらい合わなくて、なんかもう、ね、「ダンテ01」は見ていないです。もういいやって。もういいんだ。
あらすじ:レンタルビデオ屋で働くバジル(ダニー・ブーン)は、発砲事件の流れ弾を頭に食らってしまう。仕事を失いホームレスとなった彼は、スクラップ工場に暮らす仲間と知り合う。ある日、自分の頭の中の銃弾を作った会社と、30年前に父を殺した地雷を作った会社を発見した彼は、仲間とともに復讐のいたずらを計画するのだった。
ミックマック(Micmacs a tire-larigot)バジルさん。頭に銃弾が入っています。たまに頭が痛くなったりするよ。お父さんは地雷撤去の活動をしている最中に爆死しました。特技はリップシンク。この特技、のちの作戦中にはあんまり使われないんですね。

ちょっと知恵の遅れた人なのかなあと思ったんですが、そうではないらしい。気弱です。
ミックマック(Micmacs a tire-larigot)フラカスさん。ドミニク・ピノン。人間大砲男です。若いころは「面白い顔の人」だったのに、すっかり普通に味のあるおじいちゃんになってしまった! そしておじいちゃんになったら面白い顔度が減ってしまった!
なぜならおじいちゃんは、みんな面白い顔だから…。

ほかにも愉快な仲間たちがいます。
ママ・チャウ(ヨランド・モロー)。料理番です。みんなのおかあちゃんです。
プラカール(ジャン=ピエール・マリエール)。ギロチン刑にかけられましたが、皮一枚で助かりました。
ミックマック(Micmacs a tire-larigot)ラ・モーム・カウチュ(ジュリー・フェリエ)。皮肉屋の軟体女です。よく冷蔵庫に入っています。
タイニィ・ピート(ミッシェル・クレマド)。発明家です。廃材からいろいろ作ります。
カルキュレット(マリー=ジュリー・ボー)。計算が得意です。見ただけで、人のスリーサイズから車の時速までなんでもわかります。
レミントン(オマール・シー)。民族史学者です。しょっちゅうことわざを言っています。

ミックマック(Micmacs a tire-larigot)彼らがいたずらを仕掛けるのは、2つの軍事会社社長。

ド・フヌイエ(アンドレ・デュソリエ)。ムッソリーニの眼球やマリリン・モンローの臼歯をコレクションしています。
フランソワ・マルコーニ(ニコラ・マリエ)。幼い息子に原爆のトン数を言わせたりしています。

ハイテク企業に、アナログな方法でいたずら(というか復讐)するわけです。大金持ちに、貧乏人が復讐するわけです。うん。
ミックマック(Micmacs a tire-larigot)メッセージとしては反戦なわけです。風変わりで見世物的な登場人物が、おのおのの特技を生かして活躍するわけです。実際のところ、そんなに個性を生かしきれていないところもあったりはします。

バジルさんの、ピンチに陥りそうになるとフワッと空想を始めてしまい、事態が好転するのを待っているところとか、あれ? と不安になってきます。知恵が遅れていてもいい、脳みそに銃弾が残ってるせいでなんか障害になってるとかでもいいんですけど、どうももともとのバジルさんの性格がこういうふうっぽい。
ああ、そういえばアメリもこんなかんじだったよなあ、と思うわけです。うん。
ミックマック(Micmacs a tire-larigot)作品としてのまとまりはいいんです。メッセージ性もある。美的センスも。ちょっとだけグロテスクなところも。でもやっぱりどうしても物足りなさを感じてしまうんですね。落ち着きすぎていて、ぎょっとする部分がないんです。

着地点も予想通りで、いや、予想通りなのはそれはそれでいいんですけど、ちょっと優等生すぎる気もします。
物語が破綻していてもいいから、もうちょっと無茶をやって欲しかった。

で、この映画はなにかに似ていると思ったんです。
これはあれだ、テーマも、ちょっと変わった人たちが出てくるところも、いたずらをするところも、「まぼろしの市街戦」にそっくりだ。「まぼろしの市街戦」はとてもいい映画で大好きなんです、だからこういう感じの映画は好きなはずなんです。でもなんか違うと思ってしまう。
それは、先に書きましたようにわたしが過去にとらわれてしまっているから思うことであって、映画としての欠点ではないんでしょう。

うーん。

もういいの。だってきっと、ジャン=ピエール・ジュネとマルク・キャロがもしまた仲直りして一緒に映画作ったとしても、それは「ロストチルドレン」じゃないんだからね、「ロスト・チルドレン」が好きなら「ロスト・チルドレン」を見ているべきで、先に進もうとしている人たちの腕を、過去に向かって引っ張っていこうとしてはいけないんだよね。わたしがわるいんだ。

photo
ミックマック [Blu-ray]
角川書店 2011-11-25

by G-Tools , 2014/07/18

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 父親を地雷で失くしたバジル少年。30年後、ビデオレンタル店で働いていたバジル(ダニー・ブーン)は、バイクで逃走した男が落とした銃の暴発で、頭に銃弾が残ったまま生きていくはめに。家も仕事もなくしてホームレスになったバジルだが、廃品で作った穴倉に暮らす風
  • シネマ大好き
  • 2011/06/03 8:34 PM
『アメリ』、『デリカテッセン』のジャン=ピエール・ジュネ監督最新作。父親を地雷で亡くし、自らも事件に巻き込まれ頭に銃弾を受けた男が、仲間とともにその両方を製造した会社に復讐する様子をコミカルに描いたフレンチコメディだ。主演はフランスの人気コメディアン
  • LOVE Cinemas 調布
  • 2011/06/03 10:07 PM
ミックマック スペシャル・エディション [DVD]◆プチレビュー◆愛すべき変人たちのファンキーな復讐劇。このスラップスティック・コメディーの隠し味は反戦だ。 【70点】 ビデオ ...
  • 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
  • 2011/06/03 11:35 PM
天才スピヴェットL'extravagant voyage du jeune et prodigieux T.S. Spivet/The Young and Prodigious T.S. Spivet/監督:ジャン=ピエール・ジュネ/2014年/フランス、カナダ あの過去を、あの思い出を、乗り越えて。 ユナイテッド・シネマとしまえんスクリー
  • 映画感想 * FRAGILE
  • 2014/11/25 11:51 AM
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